2026.09.04
【インプラント症例】60代 女性「噛むと痛い」歯根破折した歯の抜歯後早期埋入インプラント治療
本記事には、手術中の様子を写した写真(出血や切開箇所など)が含まれます。
苦手な方や体調の優れない方は閲覧をお控えいただくか、十分にご注意ください。

| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 治療内容 | 右上奥歯の 抜歯後早期埋入インプラント治療 |
| 年齢 | 60代 |
| 性別 | 女性 |
| 期間 | 3か月 |
| 費用(税込) | 407,000円 ・インプラント埋入手術 27万5千円 ・インプラント上部冠 13万2千円 |
| リスク・副作用 | ・疼痛 ・腫脹 ・出血 ・感染 ・インプラント周囲炎 ・上部冠破損 |
1. 患者さんのご紹介(主訴・お悩み)
60代女性の患者さんです。定期検診にて、右上の奥歯について「噛むと痛い」と訴えられました。以前から痛みがあったものの、我慢できる程度であったため治療を先延ばしにしていました。その後、痛みを我慢することが難しくなったことから、治療を行うことになりました。
2. ご来院時の状態と診断
診査の結果、右上の奥歯に歯根破折が認められました。歯根破折とは、歯の根の部分に亀裂や割れが生じている状態です。今回は破折した部分から細菌が入り込み、周囲の組織にも炎症が広がっている状態でした。
感染を伴っている部位では、状態によっては抜歯と同時にインプラントを埋入することで、感染の拡大やインプラントの脱落などが懸念される場合があります。そこで今回は、抜歯と同時にインプラントを埋入する方法ではなく、まず抜歯を行って感染部位の治癒を待ち、その後にインプラントを埋入する「抜歯後早期埋入」を選択しました。抜歯後は1か月の治癒期間を設け、その後にインプラント埋入手術を行う計画としました。
また、抜歯後のレントゲンでは、インプラントを埋入する部分の頬側の骨が失われていることが確認されました。インプラント治療では、インプラント体を支える骨の状態を考慮して治療計画を立てることが重要です。今回は残っている骨を利用しながらインプラントを固定する方法を検討しました。

【コラム】歯根破折とは
歯根破折とは、歯の根に亀裂が入ったり、割れたりしている状態を指します。破折した部分から細菌が侵入すると、歯の周囲に炎症が生じ、痛みや排膿などにつながることがあります。
3. 治療の流れ
①抜歯と感染部位の治癒待ち
破折した奥歯を抜歯し、感染が認められた部位の治癒を待ちました。抜歯後1か月の期間を設けてから、インプラント埋入手術へ進みました。


②インプラント埋入手術
治療計画時の状態を確認したうえで、Osseodensificationとグラフトレスサイナスリフトを併用し、インプラントを埋入するための穴を形成しました。また、頬側の骨が失われていた部分には骨補填材を使用しました。
③手術後の経過確認
手術翌日に術部の状態を確認し、1週間後に抜糸を行って経過を確認しました。

④インプラントの安定性を確認
手術から2か月後、ISQを測定したところ74であり、インプラントの安定性を確認しました。

⑤上部冠の製作と装着
インプラントの状態を確認した後、セレックによる光学印象を行いました。治療開始から3か月後、オールセラミックの上部冠を装着しました。
【コラム】Osseodensificationとは
特殊な形状のドリルを逆回転させることで、骨を削り取るのではなく周囲の骨を押し広げながら、インプラントを埋入するための穴を形成する技術です。骨が柔らかい場合や少ない場合でも、インプラントの初期固定を得やすいという特徴があります。
【コラム】グラフトレスサイナスリフトとは
上顎の奥歯のさらに上には、上顎洞という空洞があり、インプラントを埋めるための骨の厚みが不足しやすい部位です。この術式は、大掛かりな骨移植を行わずに、既存の骨を上顎洞の底に向かって押し上げることで、インプラントを支えるためのスペースを確保する手法を指します。
【コラム】ISQとは
ISQはインプラント安定性指数のことで、埋入したインプラントの安定性を数値で確認するために用いられる指標です。インプラント治療では、骨との安定性を確認しながら、その後の治療へ進む時期を判断する材料のひとつになります。
【コラム】光学印象とは
光学印象とは、口腔内をスキャナーで読み取り、歯や歯ぐきなどの形態をデジタルデータとして記録する方法です。今回はセレックを使用して上部冠を製作するためのデータを取得しました。
4. 治療のポイント
①感染の状態を考慮した埋入時期の選択
今回のポイントは、歯根破折によって感染が生じていた部位に対し、抜歯と同時にインプラントを埋入せず、1か月の治癒期間を設けたことです。
インプラントを埋入する時期には複数の考え方があり、周囲の骨や感染の状態などを確認しながら治療方法を検討します。今回は感染によるリスクを考慮し、抜歯後早期埋入を選択しました。
②残っている骨を利用した初期固定
抜歯後は頬側の骨が失われていました。
抜歯後に骨の再生手術を行い、治癒を待ってからインプラント治療へ進む場合には、骨の状態や治癒経過によって、治療期間が1年ほどに及ぶことがあります。
今回はOsseodensificationとグラフトレスサイナスリフトを併用し、洞底骨と近遠心側に残っている骨を利用して初期固定を得ました。抜歯後早期埋入は、症例の状態に応じて選択することで、治療期間の短縮につながる場合があります。
③頬側の骨への対応
インプラントを適切なポジションに埋入し、頬側の骨が失われていた部分には骨補填材を使用しました。インプラント治療では、インプラント体を埋入することに加え、その周囲の骨や歯ぐきの状態を考慮することも重要です。治療後も周囲組織を含めて継続的に状態を確認していきます。

5. 治療後・予後



治療開始から3か月後にオールセラミックの上部冠を装着し、治療終了となりました。
また、手術から6か月後には、手術時に頬側の骨が失われていた部分についても経過を確認しました。レントゲン写真では、同部位に骨様の不透過像が認められ、経過を確認しています。インプラントは上部冠を装着した後も、インプラント周囲炎や上部冠の破損などが生じる可能性があります。そのため、治療終了後もインプラント周囲の歯ぐきや骨、上部冠、噛み合わせなどを継続して確認することが大切です。
当院では、患者さんのお口の状態や歯の感染の有無、残っている骨の状態などを確認し、それぞれの状態に応じたインプラント治療を検討しています。抜歯が必要な歯のインプラント治療や、骨の状態を考慮したインプラント治療をご検討の方は、向日市の歯医者 もりした歯科医院へご相談ください。
監修
もりした歯科医院 院長 森下 徹(もりした とおる)
【経歴】
平成 8年 洛星中学校 卒業
平成11年 洛星高等学校 卒業
平成17年 国立大阪大学歯学部 卒業(歯科医師免許取得)
平成17年 医療法人 翔己会 かい歯科 勤務
平成21年 同法人 南茨木プラザ歯科 医長 就任
平成24年 もりした歯科医院 開業
【所属学会・スタディーグループ】
・明石矯正研修会
・GPO(General Practice Orthodontics)
・顎顔面矯正治療研究会
・日本口腔インプラント学会
【修了セミナー】
・明石矯正研修会 レギュラーコース
・明石矯正研修会 アドバンスコース
・GPO矯正コース
・顎顔面矯正治療コース
・3iインプラントコース
・補綴(セラミック)における支台歯形成コース
・FAPホワイトニングセミナー
【専門分野】
・一般歯科
・小児歯科
・矯正歯科
・インプラント治療
・補綴治療(セラミック)
・予防歯科
